エンジニアリングの想い出

コラム

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皆さん、ロッテ「雪見大福」という冷菓をご存知ですか?
もう30年ほどのロングライフ商品です。

この商品の前身があるのですが、記憶に残っておられる方もおられるかも知れません。
そうです。「綿帽子」・・「わたぼうし」です。
包装形態も「雪見大福」全く同じです。おわんが2つ並んでいる、あの形状です。

ロッテの専務さんより、マシュマロでアイスクリームを包んだ冷菓を作りたいと依頼があり、思考錯誤の上、生産ラインを完成させました。

かなりの高額な生産ラインです。名前も「綿帽子」と決まり、これは売れるぞと開発チームは自信満々でした。しかし、1ヶ月たち、2ヶ月たち、3ヶ月たっても全く売れません。

どうしよう!ロッテさんも私たちも真っ青です。
なぜなら、投資額が半端じゃないからです。その当時のロッテの専務さんはすごい権限があったのです。ご自分の頭の中にある構想を具現化するために、億の投資を最初に約束して、私たちに開発を依頼するのです。

どこかの企業の様にできたら買うよ・・というのでは無いのです。
ですから、私たちも必死で対応策を考えました。
そこで、売れない原因は何だと徹底的に検証しました。

結論は、その当時の日本人にはマシュマロはなじみが無く好みで無いと云うことです。
そこで、日本人に馴染みのある求肥餅でアイスクリームを包んだら?と云うことに結論付けました。
しかし、マイナス温度で硬くならない餅の開発が必要です。
さすが、ロッテの開発陣です。短期間にこの問題を解決し現在にいたっております。
また設備の追加は、求肥餅を作る装置だけで小額の追加で収まりました。

ここでのポイントは
1.「顧客」と「機械メーカー」の相互信頼による一体となった、問題解決力。
2.「生産者」の思いと「消費者」の趣向はマーケティングによって綿密な検証が必要。

完成時のこの喜びは、今でも昨日のように思い出されます。
人生にはこのような「眞の感動と喜び」を持つためには、波長の合ったクライアントにめぐり合う必要があります。
今の時代、できるだけ安くが先行し、競合見積りが当たり前の時代になりましたが、当時のロッテの専務さんは、君に発注すると言い切ってから仕事の内容の説明に入るのです。
私の若かりし頃のよき想い出です。
私のエンジニアリングの考え方の基本は、この頃に芽生えたと思います。

2008/10/14 Yahooブログより転載

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